海老蔵の悲痛なブログの記事が連日マスコミをにぎわせています。
こうなってくると、マスコミの方も海老蔵を含む家族の悲しみを部数や視聴率につなげようと食い物にしている感じです。
ま、海老蔵の方もブログに書くことで何とか気持ちを保っているようなので、おあいこなのかもしれませんが。

それにしても、海老蔵は気の毒ですね。
父親の先代團十郎を亡くしたと思ったら奥さんの乳癌宣告、そして死去。
何でも、先代も若いうちに両親を失っているそうで・・・・。
何か呪われてるんじゃ・・・?


ところで、海老蔵の声は、先代の團十郎そっくりになってきましたね。
映像で見てびっくりしました。
正直、個人的には海老蔵も先代團十郎も歌舞伎役者として、あまり好きではないのですが・・・。
それにしてもそっくりです。
そう言えば、中村勘九郎と七之助も、勘三郎そっくりになってきました。
さすが親子です。


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さて、麻央さんの乳癌に関しては、初期検査でグレーとされ、本人からも「生検しなくても良いのか」との質問があったにもかかわらず「経過観察で良い」との結論が出されてしまった。これが結果的に最悪の結末を招いてしまった。
診断した医師は、麻央さんのことが報道されるたびに「お前が悪い」と言われているようで、きっと針の筵の思いを味わっているでしょう。

しかしながら、これが医療ミスかと言うと、単純にそうは言いきれないと思われます。
というのも、本人がまだ授乳中であったことや、一般的な癌の経過よりも恐ろしく急速に進行したことなどから、その時点で「半年後には遠隔転移するほど悪くなる」と判断できたのか、ということになろうかと思います。
訴えれば、民事裁判でなら何らかの賠償もありえなくはないでしょうが、これ自体を「判断ミスだ」と責め立てることは、単純にはできないと思います。後からなら何とでも言えます。肝腎なのは、その時点での判断が医学的に妥当であったかどうか、です。
医学的判断として「常識的だ」となれば、結果がいかに悪くても、それは医療ミスではありません。つまり、医師は結果責任を問われないのです。
これは、「人はいつか必ず死ぬ」「年を取れば老化し、弱っていく」という動かしがたい事実と、医学・医療は生物の自然現象である「疾病」を扱うことから、どうしても限界が生じる、ということが背景にあります。
重要なのは、「その時点での判断が医学的に妥当なものであったか否か」です。それが妥当なものである限り、結果が最悪であったとしても、医師(医療)は結果の責任を問われないのです。
海老蔵や麻央さんの心情としては察するに余りありますが、学問的にはそう言うことになります。

それでも、やりばのない怒りは当該の医師に向けられるでしょうね。
通常は、患者さんとそのご家族からだけ、非難の目を向けられる訳ですが、今回の場合は日本中、いや海外からも囂々たる非難が沸き起こるでしょう。
医師としては同情しますが、そう診断した医師を責めたくなる気持ちも、わかります。

他人事ではないですね。
私も内科医である以上、似たようなケースに遭遇する可能性がないとは言い切れません。
くわばらくわばら。
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前回は、よくある自律神経失調症の方についてお話をしました。
一般的に、「自律神経失調症」と言った場合、こちらを指します。

では、少ない方の自律神経失調症の場合はどうなのか。

これは、ほとんど神経内科医ぐらいしか知らないと思います。
自律神経そのものが侵されていく病気があります。
Shy-Drager症候群(SDS)とか、Pure Autonomic Failure(PAF)※と呼ばれる病気です。

これらの病気の場合、自律神経の機能が本当にダメになるため、起立性低血圧や便秘、発汗障害などをきたすことがあります。しかも、自律神経の機能は進行性にやられていくため、これらの症状はじわじわと悪くなり、重症化していきます。そうなると、椅子から立ち上がっただけで失神してケガをしたり、便秘から腸閉塞になったり、汗をかけなくなって体温調節がうまくいかず、熱中症になったりします。
このSDSやPAFの患者さんが、では初発・軽症の時に、先に述べたような自律神経失調症になるのかと言ったら、そうでもありません。
ですので、両者は同じ病気の軽症・重症というものではなくて別物と考えた方が良いとは思いますが、とくに病名をどうこうしようと言う動きはありません。

いずれにしろ、こういう病気で起こる「自律神経失調」は、本当に自律神経の機能がバラバラになってしまったことが、症状としても検査としても明らかになります。

「プリオン」という異常蛋白の“感染”によるとされる、致死性家族性不眠症(FFI)という病気では、眠りに落ちる機構が破綻して、何をどうやっても眠れなくなります。その結果、自律神経のバランスが本当に本当に乱れてしまい、尋常ではないほどの自律神経失調をきたし、ついには死に至ります。
本当に一睡もできないのって、想像もできないほどキツくて、脳とカラダに凄まじい負担を及ぼすんです。1週間も続けば幻覚が見えたり、訳の分からない言動が目立つようになります。
自律神経「失調」の程度が、もう次元が違うと言うレベルなんです。

こういうのが、シビアな方の自律神経失調です。口の悪い神経内科医は、よくある自律神経失調症を、「偽物の」自律神経失調症、上記のようなシビアな自律神経失調症を、「本当の」自律神経失調症と言ったりします。ま、そう言いたくなる気持ちは分かります。

ちなみに、このFFIの話をすると、「私もそれじゃないかしら。きっとそれだわ」なんて不安がるおばちゃんが多数いますが(不思議と女性の方が多いです)、ま、万が一にもそう言うことはないでしょう。FFIの発症率は、年間で100万分の1です。
日常「どうしても眠れない」「毎日一睡もできない」と言う人も多いですが、1ヶ月以上経過している人はまず大丈夫。FFIではありません。大体、本人の知らないうちに結構寝てますから。それに、本物のFFIなら、眠れないだけではなく、素人目にもヤバい状態になっていきますから。自力で日常生活を送れてる人は心配する必要はありません。

でも、よくあるタイプの自律神経失調症の患者さんって、そう言うほとんどありもしないことを心配しちゃうんですよね。殊に、最近の健康情報番組は、本当にまれなケースをあたかもよくあるケースの様に取り上げてしまうので、不安に駆られちゃうんですよね。

自律神経失調症を直す第一歩は、健康番組を見ないようにすることだと、私などは思っています。

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※一般的には、「PAF」というと「発作性心房細動」という循環器の病気の方が一般的ですが、神経内科的には上記のような病気があります。
余談ですが、私が学生~研修医の頃、「心房細動」は「af」または「Af」と記載していて、「AF」と大文字で書く場合は「心房粗動」という別の病気を指していました。最近では、心房粗動は「AFL」という記載方法となり、心房細動は「AF」が正しい記載方法となりました。
発作性心房細動の場合ですが、先日、循環器の先生は「pAF」と記載していました。この辺も、あえて記載の方法を分けたのでしょうか。
先日、サテライトの診療所である仁愛診療所のHPに、自律神経失調症の記事を追加しました。
原稿を書き上げただけですので、アップされるのはもう少しかかるかもしれません。


自律神経失調症は、一般の方のみならず、医師を含む医療従事者でも誤解の多い病気です。
誤解というより、見解が一定していないと言った方が近いかも知れません。


自律神経には、交感神経と副交感神経があります。
自律神経失調症とは、この2つの神経のバランスが崩れてしまった状態で、そのために様々な症状が出ます。

実はこの自律神経失調症、一般的によく見られる自律神経失調症と、数の少ない自律神経失調症があります。
多い方の自律神経失調症は、やれめまい・ふらつきだの、不眠だの、便秘や下痢だの、頭痛だのと、全身のありとあらゆるところに、あまり一定の傾向の無い様々な症状が出ます。この症状は人によって本当に千差万別で、その他にも冷えや火照り・のぼせ、肩こり、胃もたれ・食欲不振、耳鳴り、眼のしょぼしょぼ感、動悸・息苦しさ等、本当に多彩な症状が出ます。
また、これらの症状は精神状態と密接にかかわり、いわゆる心身症の側面を持ちます。
つまり、精神的な原因で体の症状が出るし、身体の症状がストレスとなって、またメンタルが不調になる・・・という悪循環にはまるのです。


それでも、この自律神経失調症は、自律神経の不調の程度としては、軽~中ぐらいと言っていいと思います。
それほど重大な病気につながる訳でもなく、まして命を落としたりすることはありません。その一方、本人の苦痛は強烈で、この辺、医師と患者さんの間に温度差が出やすく、時にトラブルになります。

悪い事に、この手の自律神経失調症は、病気としての定義や診断基準が明確化されている訳ではなく、そもそも本当に自律神経が不調になっているのか、検査でなかなか検出できないと言う面もあります(自律神経の機能検査は難しく、実施できる病院がかなり限られるうえ、心身症ぐらいだとあまりそんな検査しません)。
医師としての経験上、確かに自律神経の不調なんだろうなとは思うのですが、検査で裏が取れないのはなかなか痛い所です。むしろ、種々の検査―――血液検査や尿検査、レントゲン、CT・MRI、心電図、脳波、PETやSPECTなど―――を行っても、症状を説明できるような異常は何も見られない、というのが一般的です。そんなわけで、この手の自律神経失調症は、精神科や心療内科によく見られます。
また、症状が頭痛なら神経内科や脳外科、胃腸の不調なら消化器、胸の動悸などなら循環器、冷えやのぼせ、生理不順なら婦人科、めまいなら耳鼻科・・・といった具合に、どこの科でも患者さんがいます。

という訳で、巷で非常によく見られる「自律神経失調症」は、患者さんはすごく多いのですが、実は検査では診断が確定できず、医師も患者も、お互いにどうしていいかわからずに困っているケースはとても多いと思います。

治療については、今回は割愛します。

次回は、数の少ない方の自律神経失調症について述べたいと思います。
2017.04.03 魔女の一撃
またサボって間隔があいてしまいました。
1ヶ月って早いですね。

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最近、ちょっと腰が痛いです。
学生時代に部活で痛めて、最近は少し調子よかったのですが・・・。

2月ごろだったでしょうか、テレビで「楽腰(らくよう)」という、コルセット?サポーター?ベルト?のCMをやっていました。
ミドリ安全という会社の製品で、要するに腰を痛めないようにというサポーターらしきものなのですが・・・・CMでモチーフにされているのが、看護師でした。
なるほど確かに、看護師は腰を使いますし、よく痛めます。

さてこのCMの中で、働く看護師同士が「魔女が来るわよ」なんて話をしています。
その窓の外で、本当に魔女が看護師を狙っていて、実際、重いものを持ち上げようとした看護師の腰を魔女が杖でどつくのですが、看護師は平気。魔女は「あれっ?」
いくらやっても看護師の腰は平気。
実は、「楽腰」を巻いていた・・・
というあらすじなのですが・・・・。

私などはこれを見て「ははぁ」とピンときました。
看護師にわざわざ欧米人を使っているのも、納得がいきます。
ですが、これは、一般の方には少々分かりにくいというか、いささか説明を要すると思います。

ギックリ腰で、ギクッ!とくる、あの一瞬。本当に動けなくなるようですね。
一瞬で起こるあの痛み、あれを欧米では「魔女の一撃」と呼ぶのです。

それを踏まえると、あのCMの意味がもう少し分かります。
一撃を加えようとした魔女が、「楽腰」にそれを阻まれる、そのぐらい「楽腰」は腰にいいですよと、そう言いたいわけです。

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「魔女の一撃」に限らず、昔の人は症状名や病名に、とても文学的というか、粋な名前のつけ方をしたものです。
実際、次のようなのがあります。

●「ウンディーネの呪い」;curse of Ondine
水の妖精、ウンディーネ(オンディーヌとも)の呪いで、息ができなくなるということになぞらえて、特殊な呼吸障害にこういう名前が付きました

●「クロコダイルの涙」;tears of crocodile
ワニの涙症候群;crocodile tears syndromeとも言います。
病気や手術の後遺症で、顔面神経のつけ間違いが起き、悲しくもないのに食事中などに涙が出てしまう症状をこう言います。

●「不思議の国のアリス症候群」
本当にあるんです、こういう症候群。内容は・・・噛み砕いて説明するのが面倒なので、割愛します。

●「メデューサの頭」;caput Medusae
門脈圧亢進症状として有名な症状で、医学生でも知っていますが、最近あまりお目にかかりません。肝硬変などで、門脈の圧力が高まってしまった時に腹部に現れる模様です。

この他に、ギリシャ神話がらみで言えば、「アキレス腱」もありますね。ギリシャ神話の英雄・アキレスがこの部分を射抜かれて倒されたので、それにちなんで「アキレス腱」と名付けられたと言う・・・ま、あまり役には立たないトリビアなんですが。
でも、こう言う名前があると無味乾燥な医学も多少は面白くなりますよね。
今年は100年記念大会だそうですね。始球式は世界の王さん、選手宣誓は第1回大会の優勝校(の流れをくむ)鳥羽高校(何と、三重県ではなく京都府だそうです)の主将。今年も色々と話題豊富です。

とか言いつつ、今回の話題は野球ではありません。

PL学園の高校球児が、白血病に罹り、闘病のため1年留年し、それでも頑張って大阪予選に出場したと言う記事がありました。準々決勝で敗退したそうですが・・・。

また、大木凡人さんが、大動脈解離で手術していたとの報道がありました。
「誰だそれ?」と言う人がいるかもしれません。
名前聞いて分らなくても、見ればわかる人は多いと思います。
ワイドショーでリポーターを数多くこなした人です。


この2つの記事(スポーツ新聞ですが)で共通し、とても気になったのが「難病」と言う記載。

マスコミ関係者は、ちょいと難しそうな病名にはすぐ「難病」とつけたがります。「難病」=「難しい病気」程度にしか思っていないのかもしれません。ちょっと待って頂きたい。
大動脈解離も白血病も、生命に関わる重大な病気ではありますが、決して難病ではありません。


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実は、医学的には、「難病」と言うカテゴリーはありません。
あくまでも、福祉政策の一環として、行政的に指定されるものなんです。
そして、この難病と言う制度、実は世界的にも類を見ない優れたシステムなんです。
難病に指定される病気は、患者数が少なく(希少疾病と言います)、原因不明で治療法が確定していないものから選ばれます。
そう言う病気は、マーケットが小さい分利益が出にくく、投資額を回収しにくいため、企業も薬の開発などに及び腰になりやすく、勢い研究が遅れがちです。その分、患者さんやご家族の負担が重くなります。

そう言う病気を、国の主導で何とかしようと言う制度が、この難病と言う制度です。
その分、国や地方自治体の財政を圧迫しますが・・・。
当然ながら、難病に指定されるには「原因不明である」「患者数が少ない」など、一定の基準があります。
命にかかわる病気でも難病でない物はゴロゴロあります。



難病と言う制度の出発点は、昭和47年。
スモン(SMON:Subacute Myelo-Optico Neuropathy)と言う病気が指定されたのが最初で、これ自体も神経内科の病気です。
その後難病の数はじわじわ増えて、認定される患者さんの数も増えて、制度的には(財源も含めて)限界が来ていたと言うことで、今回の法改正に至りました。
「難病の患者に対する医療等に関する法律」と言う名前の新しい法律(いわゆる難病新法)が施行されました。

この法律の中で、難病に認定される疾患の数が、これまでの56疾患から一気に304疾患へ増えました。
こうなるともう、とても覚えきれません。
ですが、相変わらず神経疾患の数の多いこと。
難病情報センターのホームページに入ると、疾患カテゴリーごとに分けて検索できるようになっていますが、「神経疾患」のカテゴリーは、そこに含まれる疾患の数がやはりトップです。
ウィルソン病など、これまで「なぜこの疾患が難病に認定されていないんだろう」と思っていた疾患も認定されました。


ややこしいのは、障害者総合支援法でも「難病等」の相談を受け付けるとあり、この「難病等」は上記の指定を「参考にする」としつつ、結果的に322疾病と微妙に異なっている事です。
あっちの法律では難病に指定されているけど、こっちの法律では該当しない、と言うことが生じる訳です。
2つの法律の成立過程のタイムラグによるものですが、まさにお役所仕事。勘弁して欲しいです。


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昨年、難病ALS(こっちは本当に難病です)をブログの記事にしました。
昨年は、ドラマやアイス・バケツ・チャレンジなどでも話題になりました。


その時、「治療薬としてさまざまな薬が検討されているが、軒並みダメだった、エダラボンもダメだった」と書きました。
そのエダラボンが、ついに厚労省の認可を得て、この6月からALSの治療に使えるようになりました。
・・・といっても、治験でそんなにいい成績を出せたわけではない上に、高価な薬で、2週間毎日点滴しなければなりませんが・・・。

それでも、全くと言っていいほど手立てがなかった病気に、1つでも選択肢が増えるのは悪くないことだと思います。
私も早速、外来で担当している患者さんに、点滴治療をお勧めしました。

少しでもいい結果が出てくれるといいのですが・・・。

再来週あたり、受診するはずです。