寒くなってきました。

冬は脳卒中の増える季節です。

以前は、高血圧性の脳出血や脳動脈瘤によるくも膜下出血が多かったので、冬はそれらの患者さんが次々に救急車で搬送されてきます。その上に肺炎や餅の誤嚥、通院患者さんの風邪やインフルエンザ、パーキンソン病の悪化などで、冬は特に忙しい時期でした(反対に、夏場は脳梗塞のシーズンです)。

当時私が働いていた母校の大学病院では、脳出血・くも膜下出血に関しては、「手術適応のあるものは脳外科が診る、無いものは神経内科が診る」と言う申し合わせがありました。これはつまり「軽すぎて手術の不要な患者と重すぎて手術できない患者は神経内科が診る」と言うことなので、結果的に脳出血・くも膜下出血の大半を神経内科が診ている格好になっていて、鬼のように忙しかったです。おかげでいい修行になりましたが。

私が医師になりたての頃は、
「冬は脳出血が多いので、風呂場と脱衣場とトイレを温めるように指導しなさい、排便時むやみにいきんだりしないように、普段から排便コントロールも重要」などと教わりました。

こういった啓発活動が実を結んだことや、血圧のコントロールがぐっと良くなったせいもあってか、脳出血・くも膜下出血は本当に減り、近年は脳卒中の大半を脳梗塞が占めるようになりました(余談ですが、かの上杉謙信は、一説に脳卒中で死んだとも言われます)。

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日本の食事は塩・醤油・味噌などの使用によって、塩分が多くなりがちです。
「減塩」と言う言葉が定着して久しいですが、それでもまだ塩分の薄い食事は馴染めない方が多いようで、「病院の食事は味がない」とよく言われます。加えて、高血圧は症状がないので、痛くもかゆくもありません。塩分を控えるモチベーションを保つのが大変なのです。私も、患者さんにはよく言います。
「食事の塩分だけではありません。梅干しや漬物を頻繁に食べていませんか?刺身をどっぷりしょうゆにつけていませんか?毎食味噌汁とかじゃないでしょうね?間食に煎餅やおかき・あられなど塩気のものを食べていませんか?ラーメンの汁は残しましょう。薄味は慣れです。慣れるまでは大変ですが、慣れれば美味しく食べられます。今の時代、脳卒中でポックリ行くのは難しいです。後遺症を残したまま生き残る可能性が大です。それが嫌なら塩分を控えて下さい」

ほとんどの場合、男性は最初苦笑いしますが、だんだん強張った顔になります。

自分の足で歩いてトイレに行き、自分の口から食べる・・・そんな基本的なことを死ぬまで続けたければ、脳卒中の予防はしっかりしないといけません。
それでも一定の確率でなっちゃうんですけどね。
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人間、一睡もできない状態がずっと続くと、命に関わります。
ただ、この「ずっと」がどのくらいかというのがミソです。
数日位なら直接的な命の危険はないでしょう。
ただ、これが月ぐらいの単位になると、危険です。
自律神経のバランスがあまりにも破綻しすぎて、血圧や心拍のコントロールや内臓機能の調節ができなくなり、死に至るのです。
その名も、「家族性致死性不眠症」。

「家族性」とはこれすなわち、「遺伝性」と同じ意味です。
遺伝性プリオン病という分類に属する、一種の感染病です。
「プリオン」と言うのは、ただの蛋白質のくせに感染を起こ、普通の消毒では防げない、厄介なものです。
最近ちょっと忘れ去られている、ウシ海綿状脳症(BSE)・・・いわゆる狂牛病も、プリオン病の一種です。


「眠れないと命に関わる」などと言うと、「自分もやばい!」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
でも、まず大丈夫です。
普通、「一睡もしていない」と思っても、実は結構寝ているものです。
「5分しか眠れなかった」と思っても、案外15分とか30分とか寝ているものなんです。
でも、そういう不安の募る人って、「『普通』って言うけど、自分は悪い方に特別で、普通じゃない」と思ってしまいがちなんですよね。

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「本当に一睡もしてないんです、もう2年にもなります」
「一睡も?」
「そうなんです、本当なんですよ。布団に入っても全っ然眠れないんです。主人は隣でかーかー寝ちゃってるし、もう・・・寝ようと思って考えれば考えるほど眠れませんしね。よっぽどお薬飲もうかと思うんですけど、やっぱり睡眠薬って怖いですしねぇ・・・」
「ご主人さんは何と?」
「主人は寝てるっていうんですけど、いや、私本当に寝てないんですよ。全っ然眠れないんです。そのくせ、昼も眠くなりませんしねぇ」
「体の不調はありますか?」
「だるいし疲れやすいし、肩は痛いし、首も凝るし。腰も痛くて眼もかすむからちゃんと歩けないし、頭も痛くて、そうそう、最近物忘れも激しくて人の名前が出てこないし・・・心配だからTVでやってたアガリクスとクロレラとコンドロイチンと、あともう1個飲んでて・・・やだ、また出てこないわ。ほら、こんな感じなんですよ。買い物行ってもすーぐ忘れちゃって。しかもまた、下の娘が最近孫連れてよく帰ってくるんですよ、孫の面倒見させられて、男の子だしもうへとへとになっちゃって・・・・(以下略)」

こっちが便通や食欲の事などを聞きたいと思っても、口をはさむ間もないほど延々としゃべり続けたりします。
概して、こういう方はまずほとんど何の心配もないのですが、こんな方に「致死性不眠症」なんてものがあるなんて知られたら一大事です。
「もしかしたらそれじゃないかしら!」
何て自分で想像をたくましくして、どんどん不安に陥っていくこと、請け合いです。

睡眠医学の世界には「精神生理性不眠」なんてものがありますが、こうなるともはや神経症に近くなっていきますので、精神科の領域に近くなります。

これを読んでご心配な方は、どうぞ当院へ。