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前回、PSLSの話を書きました。

これを主催した、メディカルコントロール協議会とは、救急医療体制の充実を図るために、地域の救急隊と救急病院、行政、医師会などで構成される団体です。当然、救急隊員がどっさり所属しています。
今回のPSLSに関しても、地域の救急隊員や救急外来の看護師などが関わっています。
ということで、PSLS後に行われた打ち上げには、当然そう言った面々が顔を合わせます。


救急の現場で活躍するのは、やっぱり救急救命士です。彼らの多くは、消防署員で救急車に乗務して、後に救急救命士の資格をとった人達です。つまり、消防隊員としてのキャリアを積んでいる訳で・・・当然、そう言う場面にも遭遇しています。

病院の中で患者の到着を待っている我々には想像もつかない様な厳しい現場を潜り抜けてきていて、その話は、さながら映画のワンシーンの様です。

「ボヤだと聞いて出動したのに、バックドラフトで手が付けられない状態になってた」とか、「家の中で煙が充満していて、視界ゼロの中を飛び込んだ」とか。バックドラフトなんて映画で知っただけですが、この耳で生の体験談を聞くことになるなんて、全く想像しませんでした。

火事では煙で全く見えないこともあるので、風を通すために故意にガラスを割ることもあるんだとか。
しかも、当たり前ですが、傷病者がいるかどうかの情報も不確実な情報しかないんですよね。
そんな状況下で延焼を防ぎ、いるかもしれない(いないかもしれない)傷病者を助けるために、身体を張る消防士。
目の前にいるのは、そういう男達です。
・・・カッコイイ。
飲んだくれて馬鹿騒ぎしている姿すらカッコよく思えます。


救命士の熱い語りは続きます。
「病院へ運ぼうと思ったら、救急車は別の現場に呼ばれて不在。待っても全部出払ってて来ない。仕方なく警察官に運んでくれと言ったら、『それはできない』と来やがった。「救命士の手配や病院の選定、全部俺が責任取るから、とにかく運んでくれ。人の命がかかっている」と言っても『規則上できない』みたいにぐずぐず言って埒が明かない。ところが、現場のボスみたいな人にかけあったら『よしわかった、こっちは俺が責任取るから、運ぶのはあんた達に任せた、車は貸すから早く運んでくれ』と言ってくれて助かった」
おぉっ、カッコいい!本気でドラマみたいです。

惚れてまうやろ~!・・・・・・って、チト古いか。

消防・救急の世界は、熱い男達がごろごろいます。
事実は小説より奇なり。
救急の現場には、凄いドラマがたくさん潜んでいます。
もっとも、ここには書けない話もたくさん聞きましたが。



え?「バックドラフト」って何かって?気になる方は、USJへおいで下さい。




※記事の性質上、全体の構成に影響しない範囲で救命士の話の内容に一部アレンジを加えています。
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1月13日、茨城県でPSLS講習会に、コースディレクターとして参加してきました。
PSLSとは、Prehospital Stroke Life Supportの略で、脳卒中病院前救護と訳されます。
その名の通り、脳卒中を発症した(と思われる)方を対象にした、病院到着前の救護に関する技術講習です。
受講生は、主に看護師と救命士です。
(稲敷MCの皆さん、お疲れ様でした。特に平〇さんと小〇さんにはお世話になりました)

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前回も書いたように、近年は出血系の脳卒中が減り、脳梗塞が増えました。
脳梗塞は、血管が詰まって血が流れなくなって起こる病気です。
血が来なくなると、脳細胞は数分で死んでしまいます。
死んだ細胞の数が少なければ、麻痺などを起こしてもリハビリで回復することもありますが、数が多ければ後遺症が残ります。
つまり、死滅する細胞の数を如何に少なくするかが、後遺症の軽重を決める鍵になるということです。
それには、とにかく1分でも早く血流を再開することです。


一方、脳梗塞の患者さんが、症状に気づいてから受診するまでの時間は、全国平均で10時間ぐらいだと言われています。
茨城や栃木辺りでは(多分他の田舎も似たようなものだと思いますが)、その日の内に来てくれればまだマシな方です。
明らかに手足が麻痺しているのに「寝てれば治っぺ」と受診せずに済ませてしまうケースが後を絶ちません。
「昨日の内に来てくれれば・・・」とがっくり来るケースの、何と多いことか。
以前、Yahoo!知恵袋で、「朝から手が動かなくて呂律も回らない、どうしたらいいか」と言う質問がありました。
いや、そんなことしてないで早く救急車呼んで下さいよ!

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脳梗塞にもいくつかのタイプがありますが、中でも恐ろしいのは心房細動と言う不整脈が原因で起こる、「心原性脳塞栓」です。
動脈硬化を基盤として起こる「アテローム血栓性脳梗塞」は、動脈硬化のため血管がじわじわと細くなり、最後に詰まってしまう。言うなれば、身体にとっては「来るぞ来るぞ」と言う予告があるようなもので、それなりに備えが出来ています。
ところが、心原性塞栓の方は、そう言う予告が全くなく、いきなりずどんと起こるので、ダメージが大きくなりがちです。
しかも、脳梗塞の範囲が大きくなりやすく、なおかつ脳梗塞を起こした場所に出血することが稀ならずあり、治療に難渋するのです。なぜなら、脳梗塞の治療に使うべき「血を固まりにくくする薬」を使ってしまうと、仮に出血した際に血が止まらなくなり、余計にダメージを大きくしてしまうからです。

そんな訳で、心原性脳塞栓の大きいものは、治療の手段が極めて限られるため、高い確率で寝たきりとなります。

心原性塞栓

しかし。
そこに現れた強力な治療薬が、t-PAです。
この薬、国内では2005年に認可されたばかりです。
脳梗塞の病型による使用制限はありませんが、投与開始までのハードルや治療効果・危険性・後遺症等々を考えると、やはりアテローム血栓性脳梗塞には、他の薬剤を使用するのが一般的だと思われます。即ち、多くの病院では、t-PAの投与は心原性脳塞栓症にほぼ限定されるのです。


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確かに、このt-PAという薬、本当に劇的に効きます。
全く動かなかった手足が、注射した途端、目の前でみるみる動くようになった、あの驚きは忘れられません。
ですが、この薬には厳しい使用制限があります。その1つが時間です。
使ってもいいのは、発症から4.5時間以内です。病院到着からでも、発見からでもありません。発症から4.5時間です。
従って、おおよその発症時間が特定できないことには使えません。
「仕事から帰ってきたら倒れていた」「朝起きたら、すでに手足が動かなかった」と言うケースでは、もう完璧にアウトです。
しかも、認可された当時、この時間制限は「3時間以内」でした。
2012年に使用時間の制限が3時間から4.5時間に延びましたが、本質的には同じことです。
要するに、気付いた時点で一刻も早く来なければダメ、自分で連絡できなかったらアウト、と言うことです。
救急車で来たって、カルテ作って問診・診察、血液検査、心電図、頭部のCT・MRIなど、最低限の検査をして、本人やご家族に色んな説明をして、同意書貰って投与するまで、どんなに超特急でやったって、普通は1時間程度かかります。
つまり、基本的には発症から3.5時間以内に総合病院に到着しないと、使えないんです。


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このt-PAに関しては、NHKの「ためしてガッテン」やテレ東の「ワールドビジネスサテライト」でも報道していましたが、
私などが見ると誤解を招く表現が数多く見受けられます。
脳梗塞の恐ろしさを強調して、その後に「特効薬があります」と言いだし、劇的によく効いた例をひっぱり出す、あざとい演出。
これは誤解を招きます。いくら何でも「特効薬」は辞めて頂きたい。
どんなに重症でもたちどころに治るかのようなイメージで来られても困ります。
いくらいい薬でも、死んだ細胞を生き返らせることはできません。
しかも、使用制限が厳しいことや、4.5時間の縛りは割とあっさり流す始末。
そこ大事なんですけど!!4.5時間で来られても使えませんから!!
実際、救急外来ではそう思い込んでいるご家族がしばしば見受けられます。
残念ながら、病院到着時で発症から4.5時間ではもう無理です。


脳の病気は、心臓などに比べて比較的進行が遅く、1分1秒を争うケースと言うのは意外に少ないのですが、脳の世界で数少ない、1分を争うケースがこれです。
皆さん、ある日手足が動かなくなって呂律が回らなくなったら、とにかく救急車呼んで下さい。
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