小林麻央さんが22日、亡くなりました。
連日、どの局でも報道しまくっていて、今日は追悼番組もありました。
一介のフリーアナウンサーでしたが、元々人気者だったし、成田屋・市川海老蔵の奥さんという立場もあって、如何に影響が大きかったのかを見せつけられます。
34歳という若さもそうですが、事の発端が乳癌の見逃しと言う、医師からすれば決して他人事とは思えない事態だったせいもあり、またデビューの頃からよく見ていたアナウンサーだったこともあり、注目していたんです。

骨や肺に転移し、酸素吸入のカニューレも巻いていたので、さぞかし痛かったり苦しかったりしたでしょうが・・・。
ブログの顔写真も、いかにも病人ぽくて、気の毒と言うほかありません。
それでも小さな幸せを見つけてはこまめに発信していた姿勢には脱帽です。

26日の海老蔵のブログで、勸玄君が突然泣き出した、それが「ママを失った事を必死に耐えていたんだ・・・とわかる泣き方でした」とあったのは・・・もう、痛ましいとしか言いようがありません。
母が亡くなったことを彼なりに理解し、受け止め、父を思いやって耐えていたのでしょう。
小さな子供を持つ同じ親として、切ないったらありません。
自分が病気になったらどうするかな・・・。
そんなことも考えてしまいます。


この若さで、しかも癌としても不幸な経過をたどって、小さな子供と大きな責任を背負った夫を残して死ななければならなかった悲劇に、どうしても「気の毒」「可哀想」となるのですが、それは本人の意思に反するそうです。
「病気になったことが私の人生を代表する出来事ではないから」と。
なるほど、その通りです。

海老蔵も、歌舞伎界を代表するプリンスと言う重大な立場にいながら、よく支え、ここまで看病してきたものです。いやはや脱帽です。

私も、これを機に自分が病気になった時のことを考えてみたいと思います。
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前回は、よくある自律神経失調症の方についてお話をしました。
一般的に、「自律神経失調症」と言った場合、こちらを指します。

では、少ない方の自律神経失調症の場合はどうなのか。

これは、ほとんど神経内科医ぐらいしか知らないと思います。
自律神経そのものが侵されていく病気があります。
Shy-Drager症候群(SDS)とか、Pure Autonomic Failure(PAF)※と呼ばれる病気です。

これらの病気の場合、自律神経の機能が本当にダメになるため、起立性低血圧や便秘、発汗障害などをきたすことがあります。しかも、自律神経の機能は進行性にやられていくため、これらの症状はじわじわと悪くなり、重症化していきます。そうなると、椅子から立ち上がっただけで失神してケガをしたり、便秘から腸閉塞になったり、汗をかけなくなって体温調節がうまくいかず、熱中症になったりします。
このSDSやPAFの患者さんが、では初発・軽症の時に、先に述べたような自律神経失調症になるのかと言ったら、そうでもありません。
ですので、両者は同じ病気の軽症・重症というものではなくて別物と考えた方が良いとは思いますが、とくに病名をどうこうしようと言う動きはありません。

いずれにしろ、こういう病気で起こる「自律神経失調」は、本当に自律神経の機能がバラバラになってしまったことが、症状としても検査としても明らかになります。

「プリオン」という異常蛋白の“感染”によるとされる、致死性家族性不眠症(FFI)という病気では、眠りに落ちる機構が破綻して、何をどうやっても眠れなくなります。その結果、自律神経のバランスが本当に本当に乱れてしまい、尋常ではないほどの自律神経失調をきたし、ついには死に至ります。
本当に一睡もできないのって、想像もできないほどキツくて、脳とカラダに凄まじい負担を及ぼすんです。1週間も続けば幻覚が見えたり、訳の分からない言動が目立つようになります。
自律神経「失調」の程度が、もう次元が違うと言うレベルなんです。

こういうのが、シビアな方の自律神経失調です。口の悪い神経内科医は、よくある自律神経失調症を、「偽物の」自律神経失調症、上記のようなシビアな自律神経失調症を、「本当の」自律神経失調症と言ったりします。ま、そう言いたくなる気持ちは分かります。

ちなみに、このFFIの話をすると、「私もそれじゃないかしら。きっとそれだわ」なんて不安がるおばちゃんが多数いますが(不思議と女性の方が多いです)、ま、万が一にもそう言うことはないでしょう。FFIの発症率は、年間で100万分の1です。
日常「どうしても眠れない」「毎日一睡もできない」と言う人も多いですが、1ヶ月以上経過している人はまず大丈夫。FFIではありません。大体、本人の知らないうちに結構寝てますから。それに、本物のFFIなら、眠れないだけではなく、素人目にもヤバい状態になっていきますから。自力で日常生活を送れてる人は心配する必要はありません。

でも、よくあるタイプの自律神経失調症の患者さんって、そう言うほとんどありもしないことを心配しちゃうんですよね。殊に、最近の健康情報番組は、本当にまれなケースをあたかもよくあるケースの様に取り上げてしまうので、不安に駆られちゃうんですよね。

自律神経失調症を直す第一歩は、健康番組を見ないようにすることだと、私などは思っています。

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※一般的には、「PAF」というと「発作性心房細動」という循環器の病気の方が一般的ですが、神経内科的には上記のような病気があります。
余談ですが、私が学生~研修医の頃、「心房細動」は「af」または「Af」と記載していて、「AF」と大文字で書く場合は「心房粗動」という別の病気を指していました。最近では、心房粗動は「AFL」という記載方法となり、心房細動は「AF」が正しい記載方法となりました。
発作性心房細動の場合ですが、先日、循環器の先生は「pAF」と記載していました。この辺も、あえて記載の方法を分けたのでしょうか。
先日、サテライトの診療所である仁愛診療所のHPに、自律神経失調症の記事を追加しました。
原稿を書き上げただけですので、アップされるのはもう少しかかるかもしれません。


自律神経失調症は、一般の方のみならず、医師を含む医療従事者でも誤解の多い病気です。
誤解というより、見解が一定していないと言った方が近いかも知れません。


自律神経には、交感神経と副交感神経があります。
自律神経失調症とは、この2つの神経のバランスが崩れてしまった状態で、そのために様々な症状が出ます。

実はこの自律神経失調症、一般的によく見られる自律神経失調症と、数の少ない自律神経失調症があります。
多い方の自律神経失調症は、やれめまい・ふらつきだの、不眠だの、便秘や下痢だの、頭痛だのと、全身のありとあらゆるところに、あまり一定の傾向の無い様々な症状が出ます。この症状は人によって本当に千差万別で、その他にも冷えや火照り・のぼせ、肩こり、胃もたれ・食欲不振、耳鳴り、眼のしょぼしょぼ感、動悸・息苦しさ等、本当に多彩な症状が出ます。
また、これらの症状は精神状態と密接にかかわり、いわゆる心身症の側面を持ちます。
つまり、精神的な原因で体の症状が出るし、身体の症状がストレスとなって、またメンタルが不調になる・・・という悪循環にはまるのです。


それでも、この自律神経失調症は、自律神経の不調の程度としては、軽~中ぐらいと言っていいと思います。
それほど重大な病気につながる訳でもなく、まして命を落としたりすることはありません。その一方、本人の苦痛は強烈で、この辺、医師と患者さんの間に温度差が出やすく、時にトラブルになります。

悪い事に、この手の自律神経失調症は、病気としての定義や診断基準が明確化されている訳ではなく、そもそも本当に自律神経が不調になっているのか、検査でなかなか検出できないと言う面もあります(自律神経の機能検査は難しく、実施できる病院がかなり限られるうえ、心身症ぐらいだとあまりそんな検査しません)。
医師としての経験上、確かに自律神経の不調なんだろうなとは思うのですが、検査で裏が取れないのはなかなか痛い所です。むしろ、種々の検査―――血液検査や尿検査、レントゲン、CT・MRI、心電図、脳波、PETやSPECTなど―――を行っても、症状を説明できるような異常は何も見られない、というのが一般的です。そんなわけで、この手の自律神経失調症は、精神科や心療内科によく見られます。
また、症状が頭痛なら神経内科や脳外科、胃腸の不調なら消化器、胸の動悸などなら循環器、冷えやのぼせ、生理不順なら婦人科、めまいなら耳鼻科・・・といった具合に、どこの科でも患者さんがいます。

という訳で、巷で非常によく見られる「自律神経失調症」は、患者さんはすごく多いのですが、実は検査では診断が確定できず、医師も患者も、お互いにどうしていいかわからずに困っているケースはとても多いと思います。

治療については、今回は割愛します。

次回は、数の少ない方の自律神経失調症について述べたいと思います。