先日の外来で、患者さんの1人からこのブログを読んでいると言われました。
もちろん、発信するために書いているものなので、誰かに読まれることを想定して書いているのですが・・・・
読者が増えるのは嬉しいやら恥ずかしいやら・・・。でもまだ恥ずかしい方が強いですね。

----------------------------

閑話休題。
前回、当直のことを記事にしました。今日はその続きを書こうと思います。
医師の場合、夜間に勤務することを、一般的に「当直」と称します。
実はこれ、少々問題があるんです。



というのは、「夜勤」というのは、その名の通り「夜間の勤務」です。厳密には22時から5時までの勤務を指しその間は「勤務時間」として算定され、休憩時間も保証されます。
一方、「当直」は労基法上は「宿直」と呼ばれ、簡単に言えば「基本的には居るだけで良く、定時巡回とかの簡単な業務を除いて、あまり働かなくてよい。何か緊急事態が起こった時にだけ対処すればよい。その代り、その拘束時間は労基法上に言う勤務時間には含まれない」ということになっています。つまり、1日8時間以内、週40時間以内とかの規定にあてはめなくても良い訳です。
休日の日中の勤務、すなわち「日直」も同様です。

医師の場合、療養型の病院や精神科病院でも当番でない日の勤務等がそれに当たります。救急車は来ない、入院患者も安定した人たちばかりで急変などそんなに起こらない、とそう言う環境ですので、寝ていようがTV見ていようが勉強していようが自由、まさに労基法の言う「当直」にマッチした内容の勤務実態です。

しかし、2次・3次救急病院では、「その日だけたまたま忙しい」というのではなく、立て続けに救急車が入ったりして、もはや「当直の日は眠れないのが当たり前」になっています。運が悪いと食事はおろか、ろくにトイレも行けないぐらい忙しくなります。勤務実態として明らかに宿直ではなく、夜勤です。いや、むしろ座って食事ができるのは運がいい、という所すらあります。これは明らかに「働いているのが当たり前の状態」であって、「宿直」としては異常です。実態としては「夜勤」に相当すると言えるでしょう。

しかも、当直(宿直)はどれだけやっても勤務時間の算定に入らないので、1日8時間以内、週40時間の縛りに抵触しません。一応、宿直は週1回まで、日直は月1回までが限度となっていますが、ほとんど形骸化しています。おまけに、医師には当直のアルバイトってものがあります。常勤していない病院でアルバイトする訳です。忙しい病院もあれば、暇な病院もあります。
いずれにしても、1人の医師として考えれば、複数の病院で当直やら日直をやれば、週1だの月1だのなんていう基準はあっという間にそんな基準はオーバーしてしまいます。しかも、その当直のバイトは医局からの紹介だったりします。「大学病院では法的な基準範囲内に収めている、他は知らない」という逃げ道が打てる訳です。もっとも、それだけ働かせていても誰からも責められないので逃げの手を打つ必要すらなかったのですが。


こういう実態を厚労省も把握して、都道府県に通達を出したり、病院協会などを通じて改善を要請したり、手を打ちました。
ところが、これが行われたのは約10年前、平成14年です。
全国の多くの公立病院・大学病院が労働基準監督署に違反を指摘されていますが、これも平成18年とか21年とか、そう言うレベルです。ごく最近ですよね。
つまり、それまではほとんど野放しだったのです。


ところが。
病院側にしてみると、労基法の基準を遵守しようとすると、給与が経営を圧迫する上に、そもそもマンパワー的に宿直体制が回りません。となれば、夜間の救急患者受け入れをストップするしかなくなります。すなわち、地域の医療を支えられなくなるのです。どこの総合病院も似たり寄ったりの状況ですので、どこか1箇所がやめると、他の医療機関の負担が激増します。現に、地方ではすでにそう言う事態が起こっています。


国は「この基準を守れ、守らなければお仕置きだ」とはいうものの、地域医療を守るためには基準を破るしか方法がないという状態で、その辺の医療政策に手を打ってもらわなければ、病院の自助努力だけではどうにもならないんです。現時点では、ほとんど必要悪のような形で医師の「当直」業務は残り続け、現場の医師の精神力に支えられているのが実態です。誰かが倒れればドミノ倒しになる、何とかしたいが医師自体の数が足りない・・・。


ここまで来ると、もはや一病院の姿勢云々の話ではありません。医師をはじめとする医療従事者の給与、マンパワー、労働環境、組織体としての病院経営、医学・医療の高度化、医師の開業の自由の是非、人口の高齢化に医療需要の増大、医療費の増大、国の財政の逼迫、国民の意識の変化・・・挙句の果てに国民皆保険制度の是非にまで話が及びます。医学部新設の是非もマスコミで激しく取り沙汰されています。
その結果、いつまでたっても議論百出で結論が出ない、医師の労働環境は改善されず、それでも患者・救急車は来続け、現場の医師は燃え尽きる・・・という訳です。


こうなった原因は色々あって、何も国や官僚だけの責任ではないと思いますし、責任を追及することが私の使命ではないので深く突っ込むのは辞めますが(「医師の需給バランス」とかでググると大量にヒットします)、それでも厚労省には「お前ら何とかしやがれ!」と言いたい気持ちです。



何だか書いてて暗い気分になってきました。
実は以前からこういう重たい問題も書こうと、ちまちま書き溜めていたのですが、問題の複雑さからどうしても長くなってしまうので、それなりの時間と労力をかけないと書き切れなくなってしまうということで、延ばし延ばしにしてきたんです。
ですが、乗りかかった船です。

ほとんどグチに近いですが、医療現場の状況を1人でも多くの方に知って頂き、国民の健康と医療・政策という観点でも考えて頂きたい(参院選も見えてきていますし)ので、このまま続けましょう。
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://suneurol.blog.fc2.com/tb.php/28-891a7e06