そろそろ神経内科専門医試験の時期です。今年は、6月15日。今週の土曜日です。
私は3年前の平成22(2010)年に受験しました。
試験会場は、永田町にある都市センターホテルです。
当時はまだ赤プリがありまして。
私は1度落ちたのですが、2回目の受験の時はもう赤プリがなくなると言うので、慌てて泊まりました。
結局、翌年の震災の時も避難所に使ってましたが。


神経内科に限らず、昨今は色んな専門医があります。
ざっくり言うと、内科系は内科認定医、外科系は外科認定医を取得して初めて、各専門分野の専門医の受験資格が得られるという2階建て構造になっています。眼科・耳鼻科・産婦人科や精神科、小児科などはそれだけで1つの基本領域を形成しており、それら認定医を受験しなくても専門医が取れる仕組みになっています。
更に、それら内科・外科の専門医を取得した後に、例えば脳卒中専門医、頭痛専門医、てんかん専門医等々という、より狭い専門医を取得していく仕組みになっています。ただ、これらの専門医は、現在の所学会認定資格・・・要するに、任意団体が勝手に創設した資格にすぎません。法的には何も裏付けはないのです。

これでは制度上色々まずかろう、という声は以前からありました。また、専門医を持った医師と研修医と、どちらが診療しても同じ価格って、そりゃないよという声も医療業界から出ていました。


更に、専門医と言っても本当に色々です。中には、数年間の実務経験だけでほとんど勉強しなくてもとれるようなものもあったと聞いています。その点、神経内科専門医は、かつては試験が厳しいことで有名でした。
何しろ、大学で5年も6年も修行して、試験勉強もばっちりやった受験生たちが受けても、2~3割しか通らないという狭き門だったんです。
大学病院の医師ですら一生のうち一度も遭遇しない様な珍しい疾患についてバンバン出題されるという、かなりマニアックな試験だったらしいです。ですから、大学教授のレベルでもぼろぼろ不合格になっていました。
それはあんまりだろうという話になって、近年は合格率が上がっているようです。
それでも、筆記試験に通っても2次試験で口頭試問と診察実技の試験があって、普段診療をしていない、机上の勉強だけの資格ゲッターは排除されるようになっています。


ともあれ、あんまり簡単な専門医試験では信頼性が乏しかろうということで、厚労省が乗り出しました。
国の外郭団体として専門医認定機構をつくり、そこで各種の基幹領域の専門医の認定を一手に握ろうという訳です。
認定手数料や受験料などで収入を得ようと画策しているという噂も。
今まさに制度を替えようとしてごりごり押してきている状態で、我々も戦々恐々です。
専門医更新のための手続きなども変わるらしく・・・どうなることか、注視していきたいと思っています。
ただ、私達にとっては厳しい話ですが、国民全体にとっては、概ねいい方向に流れる(また、そうあって欲しい)ようです。

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今頃は受験生たちが最後の追い込みにかかっている事でしょう。

専門医受験生の諸君、頑張って下さい。
もしこれを読んでいたら、残り時間は少ないですが、参考にしてみてください。


我々神経内科医は、案外脊椎・脊髄の疾患に遭遇することが少なく、画像も見慣れていませんが、専門医試験では結構な分量が出題されます。代表的な所は押さえておいた方がいいでしょう。
遺伝性の疾患もしっかり押さえておいた方がいいと思います。iPS関連で移植医療が現実のものとなりつつあり、神経内科領域でも移植医療のガイドラインが出たことですし。法的取り扱いも勿論ですが、特に変性疾患やtriplet diseaseでは、子供の診断が親の発症前診断につながってしまうなどデリケートな問題を孕んだりして、倫理的側面など一般臨床ではあまり触れないけど微妙な部分もありますので。
あっ、法律で思い出しました。各種感染症類型と、インフル&風疹。当然、脳症や先天性風疹症候群も押さえておいた方がいいでしょうね。関連法規も忘れずに。
法律と言えば、脳死判定。専門医試験を受ける人ならすでにお判りでしょうが、法的な部分は正解が明確なだけに問題にしやすいです。
てんかんと道交法の問題も、現時点での法的取り扱いなど、復習しておいた方がいいでしょうね。ガイドラインもチェックしておきましょう。
ガイドラインと言えば、この数年、神経学会や神経治療学会、神経救急学会などが色んなガイドライン出してます。GBS関連やMG関連、MS関連など。特にこれらの免疫性神経疾患は、近年IFN関係やら抗MuSK抗体やらAQP4とNMOやら、割かし動きが活発な領域ですので。
IFNと言えば、多発筋炎もありますね。筋疾患の中ではポピュラーな疾患ですが、筋疾患自体は遭遇することが割に少ないですから、復習をお忘れなく。
筋疾患と言えば、筋生検。私が受けた時には図が出てきて、ここに入れる液体の組み合わせは何?ということで、液体窒素とイソペンタンを答えさせる問題がありました。経験のある人なら一発正解のサービス問題ですが、経験がなければ太刀打ちできません。経験のない人は手技的な部分にも目を配りましょう。神経生検も同様です。生検する神経のチョイスや、術後の後遺症などを聞かれた覚えがあります。
筋病理は、さすがにおろそかにしている人はいないでしょう。やっぱり病理は専門医試験の中では結構なウェイトを占めます。ただ、脳と筋にかまけて、末梢神経の病理を忘れないようにしましょう。Onion skinとか。
あと、筋疾患は筋電図との関連で色々ありますね。さすがに全く読めない人はいないでしょうが(そんな人がいたら、今年の合格は諦めた方がいいですね)、電気生理関係は判読のみならず実施についても電極の位置や皮膚温など、実践的知識を要求されたりします。今更ですがやっぱり何度かは自分でやって見ないと。
手技ものと言えば、Botoxもあります。痙性斜頸や筋拘縮への適応拡大がありましたので、こちらも手技的な部分も含めて復習しておいた方がいいでしょうね。GSKのサイトをチェックです。
治療技法つながりで。
Pompe病の酵素補充療法や、筋ジスのexon skippingなど、新しい治療技法は押さえておくべきです。
あと、脳梗塞では心原性脳塞栓がt-PAの縛りが4.5時間になったことやダビガトラン・リバーロキサバンなど新規抗凝固剤が出たこともあり、やっぱり重要な所ですね。アテローム系ではTIAの概念が変わることがトピックスでしょうか。BADの治療はまだコンセンサスが得られていませんね。CEA・CASは適応だけではなく、背景のevidenceもチェックしておきましょう。再発予防のための条件(血圧コントロールとか、リスクファクターの数とか)も忘れずに。血管障害では、案外静脈血栓に遭遇することが少ないので、経験のない人がいるかもしれません。典型の経過と画像は要チェックです。
それと、Huntington病。テトラベナジンが発売されたこともあり、やはり不随意運動の機序などと共に押さえておくべきでしょう。それから、疼痛性疾患。線維筋痛症とか、機能性疼痛性疾患の病態もだんだんわかってきたこともありますので。私の時は、各種トリプタン(スマ、エレ、ナラ、ゾルミなど)の効果発現や持続時間などの特徴を対比させつつ聞いてきた問題もありました。
その他、ALSのSOD遺伝子、FTDP-17、ADにおけるアミロイドのミスフォールディングとCJDの共通項などは認知症に絡んだ、もはやtopicsとは言えませんが重要なキーワードです。認知症つながりでは、髄液中のタウ蛋白・リン酸化タウ蛋白が保険収載されましたが、適応疾患がそれぞれ違います。AD絡みではChE阻害剤3剤とメマンチン、その他抑肝散などは、もはや知っていて当然でしょうね。MIBG心筋シンチも、early phaseとdelay phaseでおおよその値は知っておいた方がいいかもしれません。Cortico-Basal Syndromeなんてのも押さえておくべきでしょう。
睡眠障害ではRLSの治療薬が増えつつあります。LBDとの絡みもあり、Braakの仮説など色々研究の進展もあり、他の基底核系の疾患やα-シヌクレイノパチーといった観点からも復習しておきましょう。
ナルコレプシーとオレキシンなんてのもキーワードのひとつでしょうか。
検査で言えば、頸動脈エコーも、専門医としてはある程度読めて欲しいので、やっぱり要チェックです。
最後に、NMDA受容体脳炎など特殊な感性症にも気をつけて。


ただ、近年の専門医試験は、あまり奇をてらった問題はないようです。卒後5~7年目ぐらいの神経内科医が知っておくべき事項、といったレベルを想定しているんじゃないでしょうか。細かい所に拘泥しない方がいいかもしれませんね。その点、五十棲先生の本はさすがに古くなっていると思います。

泣いても笑ってもあと2日です。
受験生の皆さん、頑張ってください。
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