人間、一睡もできない状態がずっと続くと、命に関わります。
ただ、この「ずっと」がどのくらいかというのがミソです。
数日位なら直接的な命の危険はないでしょう。
ただ、これが月ぐらいの単位になると、危険です。
自律神経のバランスがあまりにも破綻しすぎて、血圧や心拍のコントロールや内臓機能の調節ができなくなり、死に至るのです。
その名も、「家族性致死性不眠症」。

「家族性」とはこれすなわち、「遺伝性」と同じ意味です。
遺伝性プリオン病という分類に属する、一種の感染病です。
「プリオン」と言うのは、ただの蛋白質のくせに感染を起こ、普通の消毒では防げない、厄介なものです。
最近ちょっと忘れ去られている、ウシ海綿状脳症(BSE)・・・いわゆる狂牛病も、プリオン病の一種です。


「眠れないと命に関わる」などと言うと、「自分もやばい!」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
でも、まず大丈夫です。
普通、「一睡もしていない」と思っても、実は結構寝ているものです。
「5分しか眠れなかった」と思っても、案外15分とか30分とか寝ているものなんです。
でも、そういう不安の募る人って、「『普通』って言うけど、自分は悪い方に特別で、普通じゃない」と思ってしまいがちなんですよね。

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「本当に一睡もしてないんです、もう2年にもなります」
「一睡も?」
「そうなんです、本当なんですよ。布団に入っても全っ然眠れないんです。主人は隣でかーかー寝ちゃってるし、もう・・・寝ようと思って考えれば考えるほど眠れませんしね。よっぽどお薬飲もうかと思うんですけど、やっぱり睡眠薬って怖いですしねぇ・・・」
「ご主人さんは何と?」
「主人は寝てるっていうんですけど、いや、私本当に寝てないんですよ。全っ然眠れないんです。そのくせ、昼も眠くなりませんしねぇ」
「体の不調はありますか?」
「だるいし疲れやすいし、肩は痛いし、首も凝るし。腰も痛くて眼もかすむからちゃんと歩けないし、頭も痛くて、そうそう、最近物忘れも激しくて人の名前が出てこないし・・・心配だからTVでやってたアガリクスとクロレラとコンドロイチンと、あともう1個飲んでて・・・やだ、また出てこないわ。ほら、こんな感じなんですよ。買い物行ってもすーぐ忘れちゃって。しかもまた、下の娘が最近孫連れてよく帰ってくるんですよ、孫の面倒見させられて、男の子だしもうへとへとになっちゃって・・・・(以下略)」

こっちが便通や食欲の事などを聞きたいと思っても、口をはさむ間もないほど延々としゃべり続けたりします。
概して、こういう方はまずほとんど何の心配もないのですが、こんな方に「致死性不眠症」なんてものがあるなんて知られたら一大事です。
「もしかしたらそれじゃないかしら!」
何て自分で想像をたくましくして、どんどん不安に陥っていくこと、請け合いです。

睡眠医学の世界には「精神生理性不眠」なんてものがありますが、こうなるともはや神経症に近くなっていきますので、精神科の領域に近くなります。

これを読んでご心配な方は、どうぞ当院へ。
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