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1月13日、茨城県でPSLS講習会に、コースディレクターとして参加してきました。
PSLSとは、Prehospital Stroke Life Supportの略で、脳卒中病院前救護と訳されます。
その名の通り、脳卒中を発症した(と思われる)方を対象にした、病院到着前の救護に関する技術講習です。
受講生は、主に看護師と救命士です。
(稲敷MCの皆さん、お疲れ様でした。特に平〇さんと小〇さんにはお世話になりました)

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前回も書いたように、近年は出血系の脳卒中が減り、脳梗塞が増えました。
脳梗塞は、血管が詰まって血が流れなくなって起こる病気です。
血が来なくなると、脳細胞は数分で死んでしまいます。
死んだ細胞の数が少なければ、麻痺などを起こしてもリハビリで回復することもありますが、数が多ければ後遺症が残ります。
つまり、死滅する細胞の数を如何に少なくするかが、後遺症の軽重を決める鍵になるということです。
それには、とにかく1分でも早く血流を再開することです。


一方、脳梗塞の患者さんが、症状に気づいてから受診するまでの時間は、全国平均で10時間ぐらいだと言われています。
茨城や栃木辺りでは(多分他の田舎も似たようなものだと思いますが)、その日の内に来てくれればまだマシな方です。
明らかに手足が麻痺しているのに「寝てれば治っぺ」と受診せずに済ませてしまうケースが後を絶ちません。
「昨日の内に来てくれれば・・・」とがっくり来るケースの、何と多いことか。
以前、Yahoo!知恵袋で、「朝から手が動かなくて呂律も回らない、どうしたらいいか」と言う質問がありました。
いや、そんなことしてないで早く救急車呼んで下さいよ!

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脳梗塞にもいくつかのタイプがありますが、中でも恐ろしいのは心房細動と言う不整脈が原因で起こる、「心原性脳塞栓」です。
動脈硬化を基盤として起こる「アテローム血栓性脳梗塞」は、動脈硬化のため血管がじわじわと細くなり、最後に詰まってしまう。言うなれば、身体にとっては「来るぞ来るぞ」と言う予告があるようなもので、それなりに備えが出来ています。
ところが、心原性塞栓の方は、そう言う予告が全くなく、いきなりずどんと起こるので、ダメージが大きくなりがちです。
しかも、脳梗塞の範囲が大きくなりやすく、なおかつ脳梗塞を起こした場所に出血することが稀ならずあり、治療に難渋するのです。なぜなら、脳梗塞の治療に使うべき「血を固まりにくくする薬」を使ってしまうと、仮に出血した際に血が止まらなくなり、余計にダメージを大きくしてしまうからです。

そんな訳で、心原性脳塞栓の大きいものは、治療の手段が極めて限られるため、高い確率で寝たきりとなります。

心原性塞栓

しかし。
そこに現れた強力な治療薬が、t-PAです。
この薬、国内では2005年に認可されたばかりです。
脳梗塞の病型による使用制限はありませんが、投与開始までのハードルや治療効果・危険性・後遺症等々を考えると、やはりアテローム血栓性脳梗塞には、他の薬剤を使用するのが一般的だと思われます。即ち、多くの病院では、t-PAの投与は心原性脳塞栓症にほぼ限定されるのです。


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確かに、このt-PAという薬、本当に劇的に効きます。
全く動かなかった手足が、注射した途端、目の前でみるみる動くようになった、あの驚きは忘れられません。
ですが、この薬には厳しい使用制限があります。その1つが時間です。
使ってもいいのは、発症から4.5時間以内です。病院到着からでも、発見からでもありません。発症から4.5時間です。
従って、おおよその発症時間が特定できないことには使えません。
「仕事から帰ってきたら倒れていた」「朝起きたら、すでに手足が動かなかった」と言うケースでは、もう完璧にアウトです。
しかも、認可された当時、この時間制限は「3時間以内」でした。
2012年に使用時間の制限が3時間から4.5時間に延びましたが、本質的には同じことです。
要するに、気付いた時点で一刻も早く来なければダメ、自分で連絡できなかったらアウト、と言うことです。
救急車で来たって、カルテ作って問診・診察、血液検査、心電図、頭部のCT・MRIなど、最低限の検査をして、本人やご家族に色んな説明をして、同意書貰って投与するまで、どんなに超特急でやったって、普通は1時間程度かかります。
つまり、基本的には発症から3.5時間以内に総合病院に到着しないと、使えないんです。


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このt-PAに関しては、NHKの「ためしてガッテン」やテレ東の「ワールドビジネスサテライト」でも報道していましたが、
私などが見ると誤解を招く表現が数多く見受けられます。
脳梗塞の恐ろしさを強調して、その後に「特効薬があります」と言いだし、劇的によく効いた例をひっぱり出す、あざとい演出。
これは誤解を招きます。いくら何でも「特効薬」は辞めて頂きたい。
どんなに重症でもたちどころに治るかのようなイメージで来られても困ります。
いくらいい薬でも、死んだ細胞を生き返らせることはできません。
しかも、使用制限が厳しいことや、4.5時間の縛りは割とあっさり流す始末。
そこ大事なんですけど!!4.5時間で来られても使えませんから!!
実際、救急外来ではそう思い込んでいるご家族がしばしば見受けられます。
残念ながら、病院到着時で発症から4.5時間ではもう無理です。


脳の病気は、心臓などに比べて比較的進行が遅く、1分1秒を争うケースと言うのは意外に少ないのですが、脳の世界で数少ない、1分を争うケースがこれです。
皆さん、ある日手足が動かなくなって呂律が回らなくなったら、とにかく救急車呼んで下さい。
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