今回は、私の母校が主管で、もちろん教授は恩師です。
認定医の更新のためのポイントを取得しないといけないと言うこともあり、宇都宮まで行ってきました。

学会場では朝から活発な討論が行われていました。
着いて早々、後輩のT君に会いました。
後輩と言っても、既に神経内科の准教授。脳卒中のスペシャリストで、今回の学会の事務局長です。
いやぁ、偉くなったもんだ。
若かりし頃の思い出話に花を咲かせつつ、ちょいと学会や教授の裏話も仕入れたりして。
おっと、これ以上は内緒です。

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睡眠学会の面白い所は、参加者のバリエーションが広い所です。
例えば神経学会ではほぼ全員神経内科医ですが、睡眠学会は違います。
医師だけでも、神経内科を始め、精神科、呼吸器内科、循環器内科、耳鼻科、歯科など多くの科の医師が参加しますし、他の職種として検査技師や看護師、栄養、心理など多職種の発表がありました。

更に面白いのは企業展示。
テイジン、日本光電、フクダ電子、フィリップスなどといった、睡眠時無呼吸症候群に使う医科機械のメーカーや、グラクソ・スミスクライン、ツムラと言った製薬メーカーはいつもの顔ぶれですが、一見睡眠とは関係ないような企業も数多く出展していました。
富士フィルム(抗酸化サプリメントによる睡眠の改善)、ミズノ(マットレスによる疲労回復、快眠)、ヤマハ(音による睡眠導入)、ライオン(清酒酵母による睡眠改善)、アイシン精機(マットレスからの送風による暑熱季の睡眠環境改善)、鹿島建設(病室における、光、音、温度環境の改善)、バスクリン(清涼感のある入浴剤による暑熱季の入眠環境改善)などなど・・・。
こういう所は、褥瘡学会と似ています。
さすがに、睡眠は全人類(というか大半の動物)が関わるだけに、裾野は恐ろしく広いです。


ま、これだけ幅広い企業展示だと、中にはブースには入っているけれどあまりよく分っていない人もいたりします。少し興味を持って近づくと、思いっきり営業トークをされたり。
しくみや効能などについて、決まりきったマニュアル通りの答えなら返せるようですが、少し突っ込んだ質問をすると「??」みたいな顔をされたり。
若い人はそんな風ですが、おばちゃんは強力です。こっちの質問に対しトンチンカンな返事を返した上で、「いや、聞きたいのはそう言うことじゃなくて・・・」と言うと、「向こうで詳しい説明をしていますので」などといって強引に案内の紙を押し付けてきたり。客引きですか。


毎回出展していて、なおかついつも盛況なのが、足のマッサージ機器の会社。大体、いつも2~3社が出展していますが、ブースが空いているのを見たことがありません。いつも誰かがマッサージ機を使い、説明を聞いているような聞いていない様な。
残念ながら、今回も試すことはできませんでした。

あと、今回は寝具メーカーを見かけませんでした。結構ベッドや枕のメーカーが展示をしていることが多いのですが。

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シンポジウムでは、改訂されたばかりの国際睡眠障害分類(ICSD-3)の話しや、運転関連、認知症との関連、子供の睡眠障害、無呼吸症候群関連、睡眠障害と労働災害・労務管理の話題、レム睡眠行動障害と認知症、むずむず脚症候群とパーキンソン関連疾患、オレキシン関連の研究の話題、睡眠の基礎研究の話題、不眠の認知行動療法などなど、幅広く討論されていました。

今年も色々と収穫がありました。
久しぶりの更新です。

少し前のニュースですが、「加藤茶さんに重病説が流れたが、結果的にはパーキンソン症候群で、あまり大したことにはならなかった」との報道がありました。何でも、胃薬が合わず、副作用で起こしたのだということです。
この報道で、私などは「ははぁん」とピンときました。

「パーキンソン」は病名としては結構知名度がありますが、実はこれ、神経内科の専門中の専門と言っていい病気です。
ひと口に「パーキンソン」といっても、大別して「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」の2つがあり、主症状はよく似ていますが、原因や経過が明確に異なります。
このうち、パーキンソン病については、「脳のこの部分がこういう風にやられる」と言うことが明確に、顕微鏡レベルで確定しています。詳しく言うと、中脳の黒質と言う部分が変性と言う変化を起こす、という風に判明していて、これはもう医学生レベルでも知っていなければならない知識で、当然国家試験にも出ます。従って、建前上はすべての医師が知っていなければならない(知っているはずの)知識です。
一方、パーキンソン症候群は、パーキンソン症状を起こすもので、パーキンソン病以外の全てのものを指します。これには色々な原因があり、これまた医学部の進級試験や国家試験ではよく聞かれる項目です。
この、パーキンソン症候群を起こす原因として、脳梗塞や脳炎、重金属中毒、各種の神経変性疾患などがあります。
さて、このパーキンソン症候群を起こす「色々な原因」の中に、ある種の薬が含まれます。いろんな種類の薬で見られるのですが、その一つに実は胃薬があります。細かいことを言うとかなり色々あるのですが、日常診療上で良く遭遇するのは、3種類程度です。従って、あの報道を見て、sの3種類がパッと頭に浮かびました。薬剤名までは報道されていないようですが、いずれにしろ薬剤性のパーキンソン症候群は、薬をやめれば回復します。加藤茶さんも既に高齢なので、その後の経過はいささか気にかかる所ですが、まああまり心配はいらないでしょう。

ところで、薬剤性パーキンソン症候群を起こす薬の筆頭と言えば、何と言っても抗精神病薬です(よく混同されるのですが、この場合は「向精神薬」ではなく、「抗精神病薬」です。念のため)。2000年代になって出てきた、いわゆる非定型抗精神病薬では、定型抗精神病薬に比べて、副作用としてのパーキンソン症候群を起こす頻度は大分減ってはいますが、それでも軽いものを含めるとまだまだ普通に見かけます。殊に私は神経内科医ですので、パーキンソン症状には殊更敏感になってしまいます。

薬剤性パーキンソン症候群の治療の原則は、原因となる薬剤の減量ないし中止です、加藤茶さんはこれが出来た訳ですが、精神科では治療の必要上、抗精神病薬の使用は避けられないケースもあり、そうなると副作用が出るのを覚悟で使わなければならない場合もあります。その場合、抗パーキンソン薬を使うこともありますが、抗パーキンソン薬にもそれなりの副作用がある訳でして・・・。

精神科と神経内科の診療では、オーバーラップする部分は結構ありますが、このパーキンソン症候群もその一つです。

ちなみに、最近知名度が少しずつ上がってきた、レビー小体型認知症もパーキンソン症状を起こします。厳密に言えば、レビー小体型認知症で起きるのはパーキンソン症候群というよりパーキンソン病と言った方がいいかも知れません。その辺の位置付けについては、レビー小体等の脳内蛋白に関する近年の研究結果を踏まえ、色々と疾患概念上の議論がありますが、あまりにも専門的になるので、この辺でやめておきましょう。
先週、世界中でアイス・バケツ・チャレンジが話題になり、ニュースでも大きく取り上げられました。
ALS(このブログでも3月に取り上げました)を知ってもらうためだとして、バケツの水をかぶるか、100ドル寄付するか、その両方かを選択し、更に次の3人を指名するというもので、世界中の有名人が乗ったことで一気に広まりました。

そのチャレンジ自体はそう悪いことではないと思うのですが・・・・。
手法自体がチェーンメールと同じだという批判があります。
私もそう思います。

目的は悪くないと思いますし、手法に批判はあっても、ALSの知名度が広まったことは、ひとまず良しとすべきでしょう。
しかしながら、水をかぶることのインパクトが強すぎて、関心がそっちの方に行き過ぎてしまったような気がします。
結果的に、ALSという名前は知られたものの定着したとは言えないでしょう。
いわんやその中身がどれだけ知られているのかと言うと・・・。


むしろそれ自体が目的の娯楽のようになってしまい、当初の「ALSと言う難病を知ってもらう」と言う目的が置き去りにされているように感じます。
寄付した人は、ALSのことをどれほど知ってくれたのでしょうか?
「治療法のない難病?そりゃ気の毒だ、寄付しよう」
てなことでは、病気のことを知りもせずお金を出しているだけです。
それだけならともかく、単に氷水をかぶるイベントぐらいにしか思われないとしたら、本来の目的を完全に逸脱してしまっています。

そのせいかどうか、「何でALSだけ?他にも難病なんていっぱいあるじゃん」と、「難病」くくりで十把一からげに言われてしまっているものまであります。これではむしろ、ALSにネガティブな印象がついてしまいかねません。
それもこれも、ALSがどれほど酷い難病か(別に他の難病が酷くないと言っている訳ではありません。
念のため)を知らないからこそ出る批判だと思います。

ALSを始め、筋ジストロフィー、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、重症筋無力症、多発性硬化症、CJD、CIDP、ベーチェット、SLEなどなど・・・難病56疾患の内、神経疾患とされるものだけで15、神経症状を来し神経内科医が関係するものになると半数を超えます。皮膚科、内分泌科、循環器科、呼吸器科、整形外科など・・・他の難病を扱うかと比べて、群を抜く多さです。神経内科医は、日々難病と対峙していると言っても過言ではありません。
ALSを含む、難病を取り巻く状況を、この機会に多くの人に知って欲しいと願っています。
今年の第39回日本睡眠学会学術集会は、徳島県です。

四国は初めてでしたが、それほど遠くなくてよかったです。
新神戸からレンタカーで2時間足らず。ちょっとドライブしたらもう到着です。
先般、厚生労働省が睡眠指針を改定して2014年版を発表したことも話題になっていましたが、やはりホットなのは道路交通法関係。
先日も脱法ハーブや低血糖での人身事故がありましたが、過去にてんかん発作で人を死傷させて大問題になったことを契機に、今年5月に新しい法律が施行されました。それに関する種々の話題が議論されたようです。残念ながら、電車の時間の関係でこのシンポジウムには間に合いませんでした。

その他、教育現場からは若者の夜更かしや子供のゲームに関わる睡眠時間の短縮の影響を調査した報告が結構あったようです。
面白いものでは、宇宙飛行士の眠気と作業効率の低下に関する研究がありました。

2日間の日程で学会に出た後、帰途に淡路島を経由しました。
伊弉諾・伊弉冉のふた柱の神によって直接生み出された8つの島の1つとされる淡路島(おのころ島=淡路島とする解釈もあるようで、その場合は日本で最初に生まれた島と言うことになります)。更に、種々の仕事を終えた伊弉諾の命が余生を送ったとされる(亡くなったのか?神様が?)島でもあります。
ここに、阪神・淡路大震災の震災記念館があり、震源地となった野島断層がそのまま保存されています。
災害対策の勉強を兼ねて、この震災記念館を見学してきました。
当時私は医学部の5年生で栃木県に住んでいましたから、揺れを含めて直接の体験はありません。大阪に住んでいた伯父・伯母も幸にして無事でしたし、私自身はこの震災で直接の物的・人的被害を被ってはいませんが、震災報道の記録を見ると、当時の事がありありと思い出されます。高速道路が倒れ、駅の高架がつぶれたあの様は衝撃的でした。
東日本大震災(こちらは直接経験しました)の時のこともよみがえってきます。

今夜、東海地方にも台風8号が最接近します。
当初は伊勢湾台風並みだと言われた台風8号も、とりあえずそこまでの勢いはなくなっているようです。ですが、今夜から明日にかけて県内あちこちで大雨洪水の警報が出ています。
温暖化に伴い、気象条件が厳しくなって災害のリスクも高まっているようです。
東北や茨城県では、いまだに震度4以上の地震がちょこちょこ起こっています(今日もあったようです)。

避難所での睡眠不足は、災害医療の領域ではよく知られる2次被害ですので、睡眠医学も災害と無縁ではいられません。
睡眠医療の勉強もさることながら、災害対策についても考えさせられた経験でした。
2014.03.26 ALSの恐ろしさ
先週、「僕のいた時間」に絡んでALSの話を書きました。第2弾です。
先週の拓人君のスピーチには、泣かされた人も多かったのじゃないでしょうか。あのスピーチは、よく患者心理をとらえていると思います。良く取材してあるもんだと脚本に感心しました。ただ・・・聴衆の中学生や父兄たちには、もっとボロボロ泣いて欲しかったなあ。

そして、拓人君・・・ついに決断しましたね。何をって人工呼吸器についてです。
彼は「つける」と言う選択をしました。
つけるにしろつけないにしろ、重い決断です。



ALSは、簡単に言えば、脳が命じた指令を筋肉に伝える変電所がやられるために、筋肉が衰え体の自由が利かなくなっていく病気です。・・・と、言葉でいえば似たような症状を呈する病気は他にいくらもあります。
が、この病気が恐ろしいのは、進行が速いことと、症状が全身に広がることです。
初めは手や指、あるいは喉などに症状が出て「おかしいな」と思っている間に数ヶ月の単位でみるみる全身に波及、手足が動かなくなり、歩けなくなり、受診しても診断がつくまでに最短で1~2ヶ月。検査してる間も筋力低下はじわじわ進行し、ひと月ごとに出来ないことが増えていって、半年とか1年で車椅子、その内ベッド上の生活となり、やがて排泄や寝返りも人の手を借りなければ出来なくなります。その内に物も食べられなくなり喋れなくなり、経管栄養ないし胃瘻、ついには呼吸筋まで侵されて自力では呼吸できなくなります。速い人では、発症から寝たきりまで1年かからない人もいて、それでいて感覚は正常で意識も知能もはっきりしているという、とんでもない病気です。意識がはっきりしているのに、自分の意思では指一本満足に動かせないというのは、どれほど辛いことでしょう。ちょっと顔が痒くてもぽりぽりできないんです。しかもそれが死ぬまで続くのです。

更に、進行を遅くする手立てはほぼ皆無に近く、1~2年位の間にみるみる寝たきりになっていくのを指を咥えて見ているしかありません。「残された時間を有意義に過ごして」と言っても、その体の自由がきかないのです。歩けなくなり、手も使えなくなり、食べられず飲み込めず、2年位で命の選択(人工呼吸器をつけるかつけないか)を迫られる。人工呼吸器をつけたら、それはそれで身体的・精神的・経済的に本人も家族もものすごく大変です。付けないという選択もありますが、それは即ち死の選択です。意識がはっきりした人をそうやって看取って行く家族の側にも精神的にキツいものがあります。どっちにしても厳しい選択です。
加えて厄介なのが法律の壁です。人工呼吸器をつけてみて、やってはみたものの本人も家族もあまりの辛さに「もうやめたい」となっても、もうやめることはできません。尊厳死が認められないからです。
この段階で人工呼吸器を外すと、医師は(場合により家族も)殺人罪に問われます。
人工呼吸器をつけても、目玉や瞼が動く限りはそれでも意思疎通ができますが、経過が長くなると全身のありとあらゆる筋肉が自分の意思ではピクリとも動かせなくなる時期が来ます。「閉じ込め症候群」と言い、意識ははっきりしているのに、意思表示をする方法が全くなくなるのです。ドラマではこの過酷な事実を描いてくれるのでしょうか・・・。

癌の場合、末期であっても「せめて口から食べられるようにバイパスを通しましょう」とか、治らないにしてもよりよく生活できるようにするための手術(姑息的手術と言います)などの方法がありますが、ALSは残り時間を長くする方法や「せめて〇〇ができるように」と言う方法すらなく、出来ることと言えば苦痛を取り除くために麻薬や鎮静剤で体の痛みを取ったり寝かせてあげることぐらいです。

脳卒中だって、いきなり手足が動かなくなるという悲劇はありますが、命を落とすことはむしろ少ない(だからこそ余計キツイという見方も出来ますが)上、麻痺が全身に広がるなんてことはありませんし、呼吸筋をやられていくこともありません。また、そこまで重い人は大体意識がありません。

そして、この病気、現代医学でも原因は全く不明です。世界中で研究が続けられているにも関わらず、とにかく原因が皆目わかりません。この10年位の間でも、全世界で20とか30ぐらい(正確な数は忘れました)の大規模調査が行われていて、その全てが成果を出せずに終わっています・・・というか、あまりに成績が悪くて、ほとんどの研究は最後まで達成できないというありさまです。日本で作られたエダラボンという注射薬には少し期待したのですが、これもダメでした。

国内では、リルゾール(商品名リルテック)という薬が唯一認可されていますが、これとて治験の段階で効果がなかったという結果が出ていたので、普通だったら認可されないところなのですが「他に手立てが皆無だから」と言うことで、特例で認められたという薬です。要するに「運が良ければ悪くなり方が少ぅ~し遅くなるかもね」と言う薬です。
とにかく、それほどまでに治療法のない病気なんです。


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ALSがどんなに恐ろしい病気か、少しでもお分かりいただけたでしょうか。ドラマではかなりオブラートにくるんでいますが(やはりTVですから)、

これからも主人公の葛藤は続くでしょうが、それを通して「こんなに恐ろしい病気が世の中にあるんだ」と、一般の方に知って頂くだけでも意義がある事だと思います。
癌と異なり、まだまだ制度的な支援が貧困なので、これを契機に少しでも充実することを願います。